経営者からの相談で最も多いのは「自分の判断を整理したい」だった
顧問契約が決まるとき、経営者がもっとも多く口にする相談は、組織でも人でもなく「自分の判断を整理したい」です。なぜ判断が詰まるのか、どう解くのかを、顧問の現場からまとめました。
顧問契約が決まる場面に立ち会ってきて、はっきりした傾向があります。最初に語られる相談は、組織の話でも、人の話でもありません。もっとも多いのは「自分の判断を整理したい」です。
これは経営者本人にとっても意外なことが多いようです。相談に来る段階では「採用がうまくいかない」「集客が安定しない」と、具体的な症状の言葉で語られます。ところが掘っていくと、その手前で判断が止まっていることのほうが多い。
症状と原因は、たいてい別の場所にある
事業のご相談として挙がるものを並べると、おおよそ次のようになります。
- 集客が安定せず、毎月ゼロから積み上げている
- 営業が自分頼みで、任せられる人がいない
- 資金繰りが不安だが、誰に聞けばいいか分からない
- 採用しても、すぐ辞めてしまう
- 方針を伝えているのに、社員が動かない
一方で、ご自身についてのご相談はこうなります。
- 結果は出しているのに、これでいいのか分からない
- やるべきことは分かっているのに、続かない
- 過去の失敗が、いまだに判断を鈍らせる
- 経営の判断を、いつも一人で決めている
一人で判断を抱えている経営者は、珍しくありません。2020年版小規模企業白書によると、雇用の無い事業者では、製造業で約5割、非製造業で約4割が日常の相談相手を有していませんでした(出典:中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」2020年)。
別々の問題に見えますが、たいていは同じ一つの原因から起きています。判断の基準が定まっていないまま、打ち手だけを増やしている状態です。
なぜ判断が詰まるのか
判断が詰まる理由は、能力の不足ではありません。多くの場合、自分を理解しないまま他人の成功モデルをなぞっていることが原因です。
人にはそれぞれ、生まれ持った思考と行動の土台があります。速く決めて動きながら直すほうが成果が出る人もいれば、材料を揃えてから決めたほうが精度が上がる人もいます。ここを取り違えたまま「決断は速いほうがいい」といった一般論を当てはめると、自分の型に逆らい続けることになります。
当社が36タイプという分析のフレームを顧問業務で使っているのは、この土台を言語化するためです。性格を当てて楽しむためではなく、「この人はどの順番で判断すると精度が上がるか」を決める材料として使います。
判断を整理する手順
顧問の打ち合わせでは、原則として週1回30分という短い時間を使います。長く話すことが目的ではなく、次の一手を明確にすることが目的だからです。実際の進め方は、おおむね次の順になります。
- いま起きている症状を、事実と解釈に分ける
- 症状のうち、資金・集客・組織のどこがボトルネックかを一つに絞る
- ご本人の判断の癖を踏まえて、着手する順番を決める
- 同時に「いま着手してはいけない一手」を明示する
- 逆算したロードマップに戻して、今週やることを一つに落とす
4番目を明示するのが重要です。経営者の多くは、やることのリストは持っています。足りていないのは、やらないことのリストのほうです。
相談内容が固まっていなくてもよい理由
「何に困っているのか、自分でも整理できていない」という状態で相談に来られる方は少なくありません。これはまったく問題ありません。むしろ、その整理そのものが最初にお手伝いする内容です。
同じ白書では、いずれの企業規模でも、日常の相談相手を有している者のほうが、直近5年間の経常利益の傾向を「大幅増加」または「増加」と回答する割合が高いことも示されています(出典:中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」2020年)。相談相手がいるから利益が増えるという因果関係までを示すものではありませんが、判断を一人で抱え込まないことの意味を考える材料にはなります。
当社では顧問契約の前に、初回90分の経営診断セッションを無料でご用意しています。前半はひたすら伺い、後半で原因がどこにあるのか、何から手をつけるべきかを見立てとしてお返しします。その場で整理できて終わりであれば、それで構いません。
毎月3名までとしているのは、じっくり伺うために90分を確保しており、それ以上は既存のクライアントの時間を削ることになるためです。