社長が仕事を任せられないのはなぜか。原因は能力より「判断基準の不在」
社長が仕事を任せられない主な原因は、部下の能力不足ではなく、社長の判断基準が言葉になっていないことです。任せられない状態がなぜ起きるのか、どう解消するのかを、公的な調査と顧問の現場から整理します。
「任せたいのに、任せられない」。経営者の方から最もよく伺う悩みの一つです。人を増やしても、幹部を育てても、最後の判断は社長に戻ってくる。ここでは、その原因と解き方を順に書きます。
結論:任せられないのは、基準が社長の頭の中にしかないから
仕事を任せられない原因は、多くの場合、部下の能力ではなく「何を基準に決めればよいか」が社長の頭の中にしかないことです。
基準が言葉になっていないと、部下は判断のたびに社長へ確認するしかありません。社長から見ると「自分で考えない部下」に見えますが、部下から見ると「確認しないと、社長の考えと違う答えを出してしまう」状態です。どちらも悪くありません。足りないのは、判断の物差しです。
任せられない会社に起きている3つのこと
- 最終判断が社長に戻ってくる。幹部が「社長はどう思いますか」と聞き、結局社長が決める。
- 任せた仕事を巻き取ってしまう。結果が自分の基準と違うため、途中で社長が引き取る。
- 人が増えても社長の仕事が減らない。確認の数が人数に比例して増える。
3つとも、根は同じです。社長の判断基準が外に出ていないため、組織が社長の頭を経由しないと動けません。
任せることは、承継と挑戦の前提にもなる
任せられない状態は、日々の忙しさだけでなく、会社の将来にも影響します。
中小企業庁の2023年版中小企業白書は、事業を引き継いだ後継者について、先代経営者から経営の意思決定などを任されているほど、新たな取組に挑戦する傾向にあると分析しています。判断を渡すことは、次の世代が動ける条件そのものです。
また日本政策金融公庫の調査(2023年1月、有効回答4,465件)では、後継者が決まっている企業のうち、後継者が親族以外(役員・従業員や社外の人)である割合が29.5%となり、2015年調査の15.5%から上がっています。「言わなくても分かる」関係ではない相手に渡す場面が増えているということです。言葉にしていない基準は、渡せません。
解き方:言語化 → AI → 配置の順で進める
当社では、次の順番で判断を移しています。順番を入れ替えるとうまくいきません。
1. 言語化(最初の30日) 過去1年の主要な判断を棚卸しし、何を見て決め、何を切り捨てたのかを伺って文章にします。ご本人も言葉にしていなかった基準が、必ず出てきます。
2. AI化(31〜60日) 言語化した基準をAIに渡し、社内で試験的に使います。最初は社長が答え合わせをし、ずれた所を直します。任せてよい範囲と、必ず人が見る範囲がここで分かれます。
3. 再配置(61〜90日) AIや幹部が受けられるようになった判断を、実際に社長の手から外します。誰が何を決め、何を社長に上げるかを決め直します。
言語化を飛ばしてAIや研修から入ると、渡す材料がないまま道具だけが増えます。
今日からできる、小さな一歩
今週、部下から確認された判断を3つ書き出し、それぞれに「自分は何を見て決めたか」を一行で添えてみてください。その一行が、任せるための最初の基準になります。同じ種類の確認が来たら、その一行を先に渡します。
よくある質問
部下の能力が本当に足りない場合は?
能力の問題か基準の問題かは、基準を渡してみるまで分かりません。先に基準を言葉にして渡し、それでも判断がずれる場合に、育成や配置の問題として扱います。
基準を言葉にすると、柔軟さがなくなりませんか?
基準は一度決めて終わりではなく、判断のたびに更新します。当社では「判断基準書」を更新型で作っています。
出典
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